ネットショップを始めるとき、カート選びはまず必要な機能を特定するところから始めましょう。ネットショップを運営しながら、多くのネットショップのサポートをしている経験を元に解説します。
ネットショップを簡単に始められるレンタルカートとは何か
ネットショップを始めるとき、まずはショッピングモールへの出店を考えますか? それとも自前で作りますか?
楽天や Amazon は開業費用や運営コストがかかるので、ちょっと躊躇するかもしれません。
でも、自前で作るとかなり費用がかかります。 例えば、ニトリさんやユニクロさんみたいな大企業は自前で用意していると思いますが、かけている費用は最低でも数千万円。簡単には出せない金額です。
そこで、中小規模の店舗さんにお勧めなのが「レンタルカート」です。文字どおり、レンタル料を払って、既存のカートシステムを借りてネットショップを運営する方法です。
代表的なものに BASE とかストアーズなどがありますが、他にもたくさんあります。ちょっと考えただけでも、カラーミーショップや イージーマイショップ、Shopify(ショッピファイ)、らくうるカート、おちゃのこネット、たまごリピートなどなど。
では、これからネットショップを開業するとき、これらのカートの中から自社に最適なものをどうやって選んだら良いのでしょうか?
レンタルカートに必要な機能は扱う商材によって異なる
例えば、BASE や ストアーズは初期費用0円。運営費用も0円。簡単に作れて、売れた時だけ手数料を支払う方式です。とにかく格安で運営したいという人にとっては「そうそう、そういうのが良い!」って言われます。
ただ、安いだけあって、機能は最低限しかないことは覚悟しておいた方が良いでしょう。「とにかく安いカート教えて」っていう人でも、「これできないよ」「あれもできないよ」って言うと、だんだん顔が曇ってきてしまいます。
「いやいや初めはそんなに売れるか分からないし、とにかく売る仕組みがあれば良いから」って言われるかもしれませんが、以下の機能が本当に必要ないかどうか考えてみてください。
送り状CSV出力機能
宅配業者はどこの会社を利用する予定でしょうか?
ヤマトさん、佐川さん、郵便局など、各宅配業者は送り状を印刷するためのソフトウェアを提供してくれています。ネットショップでは配送が基本ですから、注文が入ったら宅配伝票を作る必要があります。
1日の注文が1件や2件程度なら、手書きあるいは、宅配伝票発行ソフトに注文メールなどから一つ一つコピー&ペーストしていけば良いですが、10件ぐらいになってくると手間がかかりますし、ミスも発生します。
カンマで区切った文字だけのファイルのことをCSVファイルと呼びますが、各宅配業者のソフトウェアで取り込むことのできる注文情報のCSVファイルを作る機能(送り状CSV出力機能)があれば、注文数が100件になっても、ワンタッチで送り状を印刷することができます。
本気でネットショップを運営するのであれば、送り状CSV出力機能は必須機能ですが、たいていの格安ショッピングカートにはこの機能がありません。
また、冷蔵品と常温品を複数扱っているお店には、商品ごとにクールか常温かを設定する機能が必要です。注文した商品の種類を見て、クール便専用の送り状を発行する機能が必要なんですが、この機能は、高価格のレンタルカートにも搭載されていないことが多いです。
フリーページ作成機能
レンタルカートシステムは、各社が管理用の画面を用意しており、そこで商品を登録すると、登録した情報を元に自動で商品販売ページを生成してくれます。ですから、Web制作の知識が全く無くても、商品販売ページを簡単に作ることができるようになっています。
ネットショップには「商品取引法に基づく表示」が義務付けられていますし、ストア情報や、プライバシーポリシー(個人情報保護に関する指針)など、ネットショップに必要なページがありますが、無料のレンタルカートでも、各項目を管理画面から入力するだけで自動生成されるようになっています。逆に、必ずしも必要ではないページを作る機能がありません。
ネットショップは商品を売ることが最終目的ですが、商品を買うのは人間ですから、商品情報だけがあれば良いというわけではありません。店舗のオーナーさんがどんな人なのか? どうしてこの商品を販売しているのか? など、お客様は商品情報以外の情報を見て購入を判断しますから、集客のためには商品ページ以外のページも充実させる必要があります。
地域別・重さ別・大きさ別の送料設定
宅配業者さんの送料は都道府県別、重さ・サイズ別送料になっています。業者さんによってはクール便があったり、代引きサービスがあったりします。格安レンタルカートはこのような細かい送料設定ができません。送料は一律にするか、商品代金に送料を含ませるかのどちらかになります。
酒屋さんやリンゴ農家など、商材が重い場合は重量別送料の導入を希望されることが多いです。また、地域別送料が設定できないと、北海道や沖縄県あては送料を上乗せしたくてもできないので、注文後に個別に連絡して送料を追加して決済してもらうという対応が必要になってしまいます。
複数お届け先機能
一人の注文主が複数の人に商品を送りたいとき、カート内で一度に設定できると便利です。この機能が無いと、お客様は、1件ずつ「品物を選び、注文者情報を入れて、届け先情報を入れる」という操作を繰り返さなければならず、面倒だから FAX で済ます(店舗側が入力する作業が発生する)という事態になってしまいます。
デザインの自由度(HTMLやCSSが使えるか?)
格安レンタルカートの中には、デザインはテンプレートからの選択になり、HTMLやスタイルシートが使えないものもあります。とは言っても、最近はネットショップもスマホから利用されることがほとんどなので(扱う商材にもよりますが)、デザインについては、あまり凝る必要はなくなってきています。
そうは言っても、ネットショップでは、商品の良さを商品ページ内でアピールできるかどうかが売れ行きを左右しますから、商品ページのデザインが自由にできるかどうかは重要なポイントです。
例えば、洋服やカバンなど、商品説明に画像をたくさん使いたい商材を扱っている場合は、商品1点ごとに何枚画像を入れられるのか。食品を扱っている場合、商品表示を見やすい表で入れられるのか。フリーで使える商品詳細説明欄があって、その中でHTMLが利用できれば、商品の魅力をより分かりやすく伝えることができます。
商品の一括登録機能
ネットショップが用意している管理画面から商品を一つ一つ登録する作業は意外と手間がかかります。ネットショップでも、実店舗と同じように、こまめに商品を入れ替えたり、配置場所を変更したりという作業が発生します。
商品をたくさん扱っている店舗は CSV ファイルなどに商品名や価格を入れて、一括登録できる機能が必須です。特に、CSVファイルの中で、商品説明に HTML タグが使えれば、商品登録が非常に楽になります。
主要なレンタルカートについて個人的な感想
上記の機能の有無を中心に、格安レンタルカートについて個人的な感想を述べます(あくまでも個人の感想です)
ベイス(BASE)
2020年8月現在、日本国内で一番人気のあるレンタルカートではないでしょうか? 個人同士の売買(C to C)を目的したカートで、小規模の店舗さんが導入しています。
お勧めポイント
初期費用0円、運営費用0円。1回の注文に対し、利用料3%、決済手数料3% +40円の合計6%+40円がかかります。売れた時だけ手数料を支払う方式のため手軽にネットショップを始められます。
人気があるだけあって、かなり高機能。HTML編集機能や送料設定、商品一括登録機能、SNS 集客機能などもあり、Apps(拡張機能)をインストールすることで、ほとんどの機能が無料で導入できます。Apps は知識があればだれでも作って公開することができるので、機能がどんどん増えているところも魅力的です。
現在、追加できる拡張機能の一覧はこちら↓
残念なところ
商品ページの自由度が無く、カテゴリーページやフリーページを作る機能がないため、お店のホームページ的な使い方には不向きです。BASE とは別にお店のホームページを作って WordPress でブログを書くとか、SNS で集客したり、ネット広告を打つなどの工夫が必要になります。
ストアーズ(STORES)
お勧めポイント
BASE と同じで、初期費用 0円、運用費用 0円。すぐにネットショップを始められます。1回の注文に対する費用は決済手数料の 5% だけなので、手数料だけ見れば BASE より 1% +40円安いです。月 1,980円のプランにすれば決済手数料は 3.6% になるので、月の売り上げが 140,000円を超えるあたりが損益分岐点になります。
フリープランの手数料 140,000×5% = 7,000円
スタンダードプランの手数料 140,000×3.6% + 1,980円 = 7,020円
残念なところ
デザインの自由度も、機能の拡張性もなく、販売するための最低限の機能しかありません。とにかく最安値でネットショップを運営したいということなら選択肢になるかもしれません。
カラーミーショップ
お勧めポイント
レンタルカートの中では昔からあるサービスなので、ネットショップに必要な機能はひととおり揃っています。商品の一括登録や、注文情報のダウンロード機能、フリーページ機能があり、商品ページやカテゴリページにもHTMが使えるフリースペースがあります。独自ドメインを取得して、自社のホームページとして運用することも可能です。
残念なところ
BASE、STORES に比べると、初期費用 3,000円、運用費用 834円~/月 と費用がかかります。運用費用は12カ月契約すれば月額 834円になりますが、ディスク容量が 200MB と少量なので、商品点数が少ない小規模店舗を除いて、ほとんどの店舗さんでは月3,000円のレギュラープランが必要になります。
売り上げ手数料はかからないと書かれていますが、クレジットカード決済を導入すれば月額固定費と決済手数料が上乗せされますので、BASE や STORES に比べるとかなり割高になります。例えば、クレジットカード決済をイプシロンで契約すると最低手数料(売れなかった時の手数料)が 1,300円かかりますから、売れても売れなくてもレギュラープランでは最低で、月 4,300円が固定費として必要になってきます。クレジットカード決済で販売すれば、ここにさらに 5.5% の売り上げ手数料を請求されます。
らくうるカート
お勧めポイント
2018年にヤマトフィナンシャルさんが始めたサービスです。ヤマトさんのサービスだけあって、送り状をワンタッチで作れる機能が魅力的です。
カラーミーショップと同じく、必要な機能はひととおり揃っています。商品の一括登録や、注文情報のダウンロード機能、フリーページ機能があり、商品ページやカテゴリページにもHTMが使えるフリースペースがあります。独自ドメインを取得して、自社のホームページとして運用することも可能です。
費用も、初期費用 3,000円、毎月300円から利用できる「ライトプラン」があり良心的です。決済サービスはヤマトフィナンシャルさんが提供しているクロネコWebコレクトになりますが、月額基本料は無料で、クレジットカード決済手数料は 5%です(変更になっている可能性もありますので、詳しくはお問い合わせ下さい)
残念なところ
実績が少ないので正直言って良くわかりません。これから期待できそうなサービスですが、他のレンタルカートと同じで、集客は自分でがんばる必要があります。
ヤマトさんには他にもヤマトシステム開発さんが手がけている e-ネコショップというサービスがあります。このサービスは、事例を見る限り、かなり古くなっており、リンク切れもあってうまくいっていないようです。
同じグループでなぜ同じようなサービスを複数起ち上げているのか謎ですが、らくうるカートはうまくいきそうな気がします。(根拠はなく、ただの勘です)クライアントさんで導入希望者がいらっしゃるので、利用してみての感想はまた後日アップしますね。
おちゃのこネット
お勧めポイント
迷ったときに一番お勧めしているカートです。お客様側も店舗側も使いやすい設計になっています。
送料設定が柔軟で、地域別・重さ別送料が設定できるため、飲み物やリンゴ、お米など、重い商材を扱っている店舗さんにとってありがたいです。 初期費用0円、月額費用500円のプランでメルマガ、クーポン・ポイント発行、掲示板、フリーページ機能が利用できます。
3,000円のプランを契約すると、決済サービス会社が複数から選べるようになったり、商品の一括登録や、HTMLを利用したデザインのカスタマイズ、独自ドメインを取得して、自社のホームページとして運用することもできます。
足りない機能
宅配会社の送り状CSV のダウンロード機能は、別途500円のおちゃのこオフィスを契約する必要があります。契約してもクール便に対応していないので、クール便と常温便の両方を扱っている店舗さんにとっては使い勝手が悪いです。
掲示板を利用したブログを運営することもできますが、WordPress のようにブログからの誘導には結びつかないため、集客は店舗ごとの工夫が必要になります。
【番外編】Yahoo!ショッピング
お勧めポイント
何といっても、無料でショッピングモールに出店できる点です。
Yahoo!ショッピングの集客力は、Amazon や楽天市場に比べれば弱いですが、知名度は抜群に高いですし、売れなければ手数料は取られませんから、出店してみる価値はあります。
売上の際の手数料は決済手段やアフィリエイトを利用するかどうかで異なりますが、だいたい8%ぐらいになります。
足りない機能
格安レンタルカートに比べると、申し込みから出店までのハードルは高いです。審査が必要で落ちることもあります。
管理画面が複雑でパソコンが苦手な方にはお勧めできません。出品する商材によっては競合が多く価格競争に陥る可能性もあります。
まとめ
レンタルカートの機能はたくさんありすぎますが実際に運営してみないと分からないことも多いため、これからネットショップを始める方が各サービスを比較して自社にあったものを選ぶことは非常に難しいです。
一方、Web制作会社はネットショップを専門にしていないことも多く、どちらかと言えばデザインがメインになりがちのため、売れるカートを選ぶという視点に欠けることがあります。
個人で始める趣味のサイトなら何でも良いですが、ある程度本格的に始めるのであれば、レンタルカート選びは慎重になった方が良いです。
今回ご紹介したレンタルカートは、なるべく費用を抑えて始めたい方向けのサービスで、売れる見込みがあり、資金力があるのであれば、楽天やAmazon も選択肢になると思いますし、もっと集客力のあるカートをお勧めしています。
長野県駒ヶ根市在住。ネットショップ構築とネットショップ運営サポートをしています。このサイトでは、ユーザーさん向けに役立つIT情報や、技術情報のメモを公開しています。詳しいプロフィール